[13] こんな日も悪くない

結局、本屋に着くまで3人でたわいもないことをお喋りしながら歩いてきた。それはそれで楽しかったので、まぁいいかと思えた。
着くと、新しくできた大きな本屋さんということもあり見応えのありそうな広さだった。施設中にはカフェやレストランも入っており何時間でも過ごせそうでお気に入りのスポットになりそうだ。
「どうする?各自でみたいコーナーを見てから集まる?」
「そうしましょうか。」
「ねぇねぇ、それならさっき見えたカフェ行こぉ!」
ももちゃんの提案で各自で見たいコーナーを見終わったらガーデンがキレイが施設内のカフェで集合することになった。
「そういえばLINE交換してなかったよね。」
リョウさんの一言でLINE交換とグループを作成した。グループ名はみんな同じ場所に住んでいるのでそのまま「アパートメント(3)」となっている。個人じゃなくてグループだけど連絡先を交換できたのは嬉しかった。
それじゃ、時間になったら集合ねと約束をしてみんなと別れて文学コーナーに足を運んで欲しかった本を探す。流石新しい大きな店舗といったところ、目当ての本も前から探していたマイナーな本もほとんど揃っていてすっかり夢中になっていると後ろから声をかけられた。
「七瀬さん?」
「へ…?」
振り向くと黒縁のメガネをかけて白のセーターに黒のチノパンを着た拓也さんが目を丸くして立っていた。手にはカゴがあり中には専門書のような本が数冊入っていた。
「こんにちは。」
歩み寄って来たので挨拶をする。
「こんにちは。奇遇ですね。今来たんですか?」
私の足元に置かれたカゴには資料と題したたくさんの本が入っている。持つのが億劫になるくらいの重さなので本を探している間は床においていたのだ。それを目に留めて、どうやら結構前からいたんですね、と笑った。
「目当ての本は1冊だったのに色々と見るうちに増えちゃって今少し後悔してます。」
苦笑いしつつ本減らそうかなと呟くと、拓也さんは少しだけ何か考える素振りをすると顔をこちらに向けた。
「七瀬さんってこの後予定とかありますか?そのまま帰るんなら僕、持ちますよ。」
どうせ隣ですし、と続けた。